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前衛たばこクリエイター集団ヤニーズ事務所

203X年。

2020年から始まった禁煙ブームのおかげで

たばこ産業は衰退していた。

財務省はたばこブームを再燃させるベく、

今までにない前衛的なたばこを開発する組織

「ヤニーズ事務所」を設立。

財務省の回し者である所長のヤニーさんは

日本全国から現代アーティスト、詩人、科学者、デザイナー

などイカれた変態野郎を集め、

日々アバンギャルドすぎるたばこの開発に取り組んでいた。

 

 

今日はハイパーオカルティック生物学の第一人者ヤマさんのプレゼンの日だった。

メンバーは皆ワクワクしていた。

 

「あの人マジでやべぇ〜っすからねぇ」

「ぱねぇっすよね〜」

「ボクらの間じゃレジェンドっすからねぇ」

 

 

ヤマさんがやってきた。

ハゲ散らかしまくった白髪頭にヤニで茶色に染まった白衣、

ギョロギョロして血走った眼球、まさに絵に描いたようなマッドサイエンティストである。

 

 

「え〜〜、皆さんお疲れさまです」

「まずは僕の作ったたばこを吸ってみてください」

 

全員にサンプルが配られた。

 

モクモクモクモクモクモク、ぷはぁ〜〜〜〜。

 

 

 

現代アーティストのタカさんが感想を述べた。

 

「香ばしいっすね」

「なんだか夏休みの前日を思い出しちゃいましたよ」

「あのウンコの先っちょがはみ出そうなキュンとする感じっていうのかなぁ〜」

「ワクワクしますね〜」

「へへへ」

 

ぷはぁ〜〜〜〜。モクモクモクモク。

タカさんは遠い目をして思い出にふけっていた。

 

 

 

「さすがタカさん」

「わかってらっしゃいますね」

「そう、このたばこのタイトルは”あの夏を忘れない”なんです」

 

「まぁ漢方に近いんですがね、、、、」

「成分の80%はヒラタクワガタとカブト虫のすり身」

「15%はクヌギの木とその樹液、残り5%は腐りかけのスイカエキスなんですよ」

「どうせ吸うのは昭和の残党どもですからね、年齢的にも滋養強壮、スタミナ、あと懐かしさも必要かと思いましてね」

「皆さん、夏休みを思い出してください」

「どこからともなく漂ってくるクワガタとカブト虫のニオイ、おぼえていますか?」

「クワガタ飼ってる虫カゴ開けたら、エサにしてたスイカの食べ残しが腐ってたでしょう」

「あのすぅぃ〜てぃ〜なニオイも皆さんの思い出だと思うんです」

「やる気が出ること間違いなしです」

 

 

 

 

 

 

「おおおおおおおお〜〜〜〜〜〜!」

 

 

 

 

誰もが納得していたが

所長のヤニーさんだけはまだ納得していなかった。

 

 

「ヤマちゃんよぉ〜〜」

「懐かしいのはいいんだけどさ〜、なんでさ〜、ヒラタクワガタとカブト虫が滋養強壮に役立つわけ?」

 

 

 

「え?何言ってんすか?」

「知らんのですか?」

 

「6センチ以上の大ヒラと力比べしたことないんすか?」

「半端ねぇ〜ですよ!」

「あのアゴの力、ぜってぇーーーおかしいですって!」

「だって、大人でもこじ開けれねぇ時があるんすよ!」

「挟まれて指に穴あいちゃった奴もいるぐらいっすよ!」

「あのスカスカの体のどこにあんな筋力があるのか不思議に思ったことないんすか?!」

「ヒラタとカブトが人間サイズになったらどうなると思います?」

「ゾッとするでしょう?」

「奴ら、ぜってぇーーーこの世の物理に反してますって!」

「この世界、マトリックスだってーーーー!」

 

ダァーーーーン!!

 

ヤマさんは机を思いっきり叩いた。

 

「あの底知れぬ謎の力、このまま放っておくわけにはいかんのです」

「人類の未来の為なんです」

「宇宙の謎だって解けるかもしれないんです」

「所長、お願いします!」

 

 

他のメンバーも団結した。

 

「所長、お願いします!」

「人類の未来の為に!」

 

 

 

ヤニーさんは目をつぶり腕を組んでじっとしたまま聞いていた。

そしてぼそっとつぶやいた。

 

 

 

 

 

「ノーベル賞だな」

 

 

 

 

「え?」

 

 

「これはノーベル賞もんだよ、ヤマちゃん!」

 

 

「本当ですか!」

 

 

 

ヤマさんは心の底から喜んだ。

今まで変態以外の誰からも受け入れられなかった

ハイパーオカルティック生物学が、

55歳にしてようやく認められたのである。

ヤマさんはその日の夜、嬉しさと開放感のあまりデリヘルを呼んで

30年ぶりにフィーバーしまくった。

 

 

 

翌日、ヤニーさんは”あの夏を忘れない”のサンプルと企画書

をまとめて細川財務大臣にはりきってプレゼンした。

 

「細川さん、たばこ革命おこしちゃいますよ」

「どうですこれ?」

 

 

 

 

「まぁ面白いんだけどね、、、」

 

「実はね、クワガタの力は国家機密なんだよ」

 

「君達が関与することは許されないんだ」

 

 

「え?、、いや、、しかし、、、」

 

 

「クワガタと自分の命、どっちが大切かわかるだろ」

「君は国を敵にまわしたいのかね?」

 

 

「は、はぁ、、、、でもですね、、、」

 

 

「ヤニー君!」

 

 

「は、はい!」

 

 

「この件は忘れたまえ!!」

 

 

「承知いたしました!」

 

 

 

その後ヤニーズ事務所は閉鎖を免れたが

「真理を追求しすぎた者死あるのみ」と上層部から脅され、

クソつまらないたばこの開発をするようになった。

そしてヤマさんだけは謎の黒装束軍団に命を狙われるようになった。

しかし、若かりし頃オカルト映画を観すぎたヤマさんは

それがちょっと嬉しかったらしく、

「I WANT TO BELIEVE」とプリントされたクワガタTシャツを作り、

ヤバい奴らに追われてる自慢の講演会とTシャツの物販を

全国各地で行い儲けまくっていた。

 

 

それから1ヶ月、

ヤマさんはこつ然と姿を消した。

 

 

ヤマさんは真のレジェンドとして語り継がれたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

| Velo | 15:31 | - | - |